出世(昇進)うつ病
長かった冬もようやく終わり、春めいてきました、何だかほっとしています。
Aさんは見るからに真面目そうな男性です、背筋をきちんと伸ばして座られ、言葉の端々に気を遣いながら私の質問に答えて下さいます。昨年の秋に同期のトップを切って管理職に昇進されたそうです。
元気一杯であった彼に変調が訪れたのは、それから2か月ほど経ってからでした。仕事上で小さなミスを犯し、上司から注意をされて以降の事です。自分のような者が、管理職になって良いのだろうか、会社の期待に応える事が出来るのか、部下は着いて来てくれるだろうか。謙虚で責任感の強い彼は管理職への昇進に、強いプレッシャーを感じて居られます。詳しく伺ってみると、ミスは小さなもので、それほど気に掛けるほどのものではなかったようです。
然し、Aさんにはそれ以降、自分はこんなポストに就けるような人間ではない、会社にも部下にも迷惑ばかりかけているとの思いが、次第に強まって来ました。眠れない、気分がすぐれない、会社に行くのが辛い、仕事に集中できない、等々の症状が現れて、心配された奥様の勧めもあり受診を決意されたそうです。
ゆっくりお話しするうちに、ミスは誰にでもある事や、自分が犯したミスがそれほど大きなものでは無い事に、少しずつ思いが至りました、病的な状態にあるから、薬を飲む必要がある事も理解して下さいました。ただ、「暫く、休みましょう。」と言う提案には、「それだけは出来ません、会社に迷惑をかけます。」と言われて、応じては頂けませんでした。
心配された上司が、少しだけ業務の負担を軽減してくれたことや、奥様の細かい心使い、服薬の効果もあって、Aさんは何とか出勤を継続しながら、少しずつ良くなられています。「業務の一環と思って無理に参加しようと思った日曜日のゴルフはさすがに休みました。」ーAさんにとっては大きな決断であったのでしょう。少しずつ元気を取り戻され、バランス感覚も蘇りつつあるようです。連休には、自分へのご褒美として奥様と旅行に行く計画も立てられました。どうやら、一番厳しいところを超えられたようです。
取締役に選任されることになったBさん、入社3年目でプロジェクトを任されたCさん等、同じような出世うつ病に悩まれている方は決して少なくありません。
「貴方は真面目すぎるのですよ。」とお話しすると、「先生、不真面目になるにはどうしたら良いのでしょう?」と質問されたりする事があります。
「不真面目になるには、どのような努力をすれば?」、こればかりは、答えがありません。
「私みたいになっては如何でしょうか?」とお答えして、互いにニヤリと出来るようになれば、もうしめたものです。
頃は春、まーのんびりと行きましょう。

